ワタシの「SEASON 2」はじまる

 大学卒業後、定年再雇用期間も含めると40年間働いた会社を先月末で退職しました!
会社の再雇用の更新期間はあと1年残っていたのですが、介護問題や社会貢献活動など元気な今しかチャレンジできないと思う事がいろいろ出てきたため、契約更新は行わないと決めたのでした。

 早速10月後半は山のように残っている有給休暇を使って「奈良・町家の芸術祭 はならぁと2023」のサポータースタッフとしてボランティア活動に参加しました。「はならぁと」は、このブログでも2011年2013年2015年とココログ時代に3回ご紹介したワタシのお気に入りイベントです。かねがね元気に動き回れるうちに地域活性化に繋がる社会貢献をしたいと思っていたワタシは、タイミングよくイベントサポーター募集のお知らせをWebで見つけ、ワタリに船、ワタシにイベント(!)とばかりに早速応募したというわけです。

 今年の「はならぁと」宇陀松山エリアのゲストキュレーターは長谷川新さん。「SEASON 2」と題して、変わりながらもその次に繋ぎ続けてきた重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)である宇陀松山を舞台にアート作品が展示されました。「全員途中参加型」の展覧会を目指したそうで、展示方法や見せ方など我々サポーターの意見も聞き入れながら準備を進めてもらったので、設営段階から会場を一緒に作り上げてゆく最高に楽しい時間を過ごすことができました。

 そんなわけで初めてサポーターとして参画した宇陀松山エリアの展示作品の中から、ワタシが準備段階から関わったいくつかの作品をレポートします。レポート内容は会場の紹介や作品鑑賞後の想いなど様々です。今回の「はならぁと」は展示作業の段階から関わることで、作品の魅力やメッセージをより自分なりに感じ取ることができたように思います。とはいえ芸術作品の捉え方は見る人それぞれです。特に現代アートはその傾向が強いと思います。芸術作品を説明するのは愚の骨頂か?とも思いますが、今回は思い込みも含めてワタシが作品から受け取ったメッセージや感じた事をそのまま書こうと思います。なのでワタシが作家さんの制作意図と全く違う受け取り方をしている可能性もありますのでご了承くださいマセ。<(_ _)>



<BUBBLE> 朝海陽子 さん 

 朝海さんの作品の展示会場となった喜楽座は明治時代に芝居小屋として創建され、その後、「喜楽館」という映画館として昭和の中頃まで経営していたそうです。エントランス付近には当時の映画ポスターや看板絵師が描いたと思われる往年の映画スターの似顔絵がそのまま貼られています。劇場内に足を踏み入れると芝居小屋としてスタートした事を物語る桟敷席が2階にあり往時を偲ばせます。

この喜楽座で展示された朝海さんの作品<BUBBLE>は5分余りの映像アートです。

国内で新型コロナが急拡大していた頃の某所住宅地。
昼下がりの防災行政無線からは、不要不急の外出を避けるよう無機質なアナウンスが響く。
夕刻、不気味なほど誰も歩いていない住宅地を抜けて近所の公園へ。
虫の声だけが響く。
公園では大勢の子どもや大人達がマスクをしたまま楽しそうに花火をしている。
帰り道。路上には誰かが落とした不織布マスクがひとつ。

2021年に1年遅れで開催した東京オリンピックの感染対策として、選手および関係者は一定の空間のみを移動することによって外部との接触を遮断したのが「バブル方式」。ほんの数年前に使われた用語なのに今や死語になりつつあります。コロナが急拡大し始めた頃から大きなバブルで包まれるように外部と遮断されていた私たちは、この一年程の間に急速に遮断が解かれどこか少し戸惑いを感じながら生活をしています。ひょっとしたら公園の花火は、もうそんなに楽しくは無いのかもしれません。


 喜楽座では、ワタシは音響のセッティングをお手伝いさせてもらいました。床はコンクリート剥き出し&天井は高く木造&所々に隙間有り、という音響的には独特のライブ感がある会場でした。しかしその隙間から適度に音が漏れる感じの臨場感が映像によくマッチしていて、とても良い雰囲気だったように思います😃。


<内灘暦> 宮崎竜成 さん

『これは暦(こよみ)なんですよ』と紹介すると、ほとんどのお客さんは『え?!』と絶句しました。縦24個の穴は時間、横には1年365日分の穴が空いており透明のビー玉は作家の宮崎さんが住む石川県内灘町の海の満潮と干潮の時刻を示しています。繰り返す潮の満ち引きは規則性があるようで揺らいでいる。私たちはコミュニケーションを円滑にするための道具として共通の暦(グレゴリオ暦)を現在使っているわけですが、地球の動きや自然の営みをもとにして自分だけの暦の一年を過ごすのが、時の移ろいを感じる事ができる最良の方法なのかも知れません。潮の満ち引きとシンクロさせて自分の1年を俯瞰できるのも、この作品の面白さの一つかな?


 <内灘暦>は最初の設営段階からお手伝させてもらったので、今回の中でも特に思い入れが深い展示作品のひとつです。まず、この部屋にどうやってこの暦を配置しようか?から始まって、ビー玉を作者である宮崎さんが作った指示書に従って間違えないように配置したり、思いのほか合板がしなるので真ん中で支える脚立を作ったりと、創作する喜びが味わえてとても楽しかったです。


<ちきゅうのれきし> 阿児つばさ さん

<ちきゅうのれきし>は、重伝建地区から少し離れた無量山報恩寺の境内の庭に屋外展示されていました。作品は4本柱の東屋とその下に置いてある数個の丸太椅子から成り、丸太に座ったり上に寝転んだりしながら「せいめいのれきし」「僕は46億歳」という2冊の絵本を読んで地球史に想いを馳せるようになっています。日に日に黄色くなってゆく大きな銀杏や青空を眺めながら暖かい日ざしを浴びてのんびりくつろげる素敵な空間になっていました。寝転んでぽっかり空いた屋根の天窓を通して空を見上げる。地球を大切にするということは、結局、自分自身を大切にする事なんだなと思いました。


 報恩寺さんでは準備の段階で東屋の屋根を雨から保護するため亜麻仁油を塗ったり、椅子になる丸太の座面を電動やすりで研磨したりさせてもらいました。丸太は大地の再生のために裏山の木を伐採されたものです。
報恩寺のご住職は遊び心のあるアイデアマンです。伐採した大きな丸太を2本並べて裏山の斜面に渡して滑り台にしたり、夜はロケットストーブで芋煮会をされたり、期間限定のコラボ御朱印・写経コーナー・セルフカフェ・読書コーナー等を企画されたりと感心するほど積極的に関わっていらっしゃいました。コラボ御朱印はお寺と作者とサポーターの共同制作(サポーターは最後に筆で日にちを書き込む係です)で、御朱印の収益は今回展示で作成した東屋を何らかの形で残す資金の一助とする予定だそうです。ワタシもひとつ授けていただきました😀。


 今年のはならぁとは上記以外にも、精巧に複製されたミレー作「種を蒔く人」クローン文化財、丸木スマさんの心を鷲掴みにされるような絵画、人物設定が絶妙な作家ユアサエボシさんの抽象画など見どころ満載でした。
特に丸木スマさんの絵画を見たお年寄りが『70歳から始めてこれだけの絵を描ける人もおるんやったら、私も諦めたらあかんな〜。元気をもろうたわ。』と言って帰って行かれたのが印象的でした。

 そしてもうひとつ、とても面白くて素晴らしい試みだと思ったのは、今年の公式ポスターです。

 地元、大宇陀小学校の3〜6年生児童が自ら描き上げたポスター121点の全てが公式ポスターとして全国各地に配られたそうです。そのうちの何枚かは宇陀松山の街角にも掲示してありました。ポスター下部の開催情報部分以外は児童が描いたオリジナルの原画全てがそのまま採用されており児童それぞれの個性が爆発しています。この試みは公式ポスターを依頼されたデザイナーの山本悠さんがイケモトタツヤさんと手掛けたそうで、そのあたりの楽しくも大変だったであろう製作過程がイケモトさんの手記の11ページ目以降に詳細に綴られていますので是非ご一読ください。



 開催期間中は展示作品の見守りという役割を与えてもらい、おかげで老若男女いろいろな来場者の皆さんと交流することができました。現代アートは間口がとても狭いけれど一歩入ってみると奥が広くて深いものだと思います。『説明を聞くまでは、なんやようわからんかったわ〜』という人に限って、その後いろんな質問をしてきます。アートだから全く説明をしないで感じたように見てもらうというのも一つの方法かも知れませんが、自分の感じた事、あるいは下調べをしてわかった事を少しお話しするだけで、来場者の興味が大きく膨らむものだという事を実感したイベントでもありました。準備も含めて約半月ほどの短いボランティア活動でしたが、得るものも大きくとても充実した日々を過ごせた事に、キュレーターの長谷川さんやアーティスト、事務局関係者の皆さんに感謝です。



「はならぁと2023 宇陀松山エリア」の展覧会タイトルは「SEASON 2」。

そう、ワタシも会社を辞めて11月からいよいよ「SEASON 2」がスタートしました。

変わりながらも次の充実した日々に繋いでゆければ良いな〜と思っています。✌️

うだよろし

Apple製品を愛するB型人間 奈良県宇陀市在住 還暦を迎え、人生2周目を周回迷走中。

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4件のフィードバック

  1. まずはお疲れ様でした。
    そして、SEASON2の始動、おめでとうございます。
    やりたいことがある!っていいですよね。しかも地域貢献。
    惰性であと一年働くより、
    人様に喜んでもらえて、充実した日々を過ごすことを優先したのは
    大正解だと思います。
    自分もあと1年と4ヶ月、残っていますが、
    うだよろしさんのような行動力がないので、惰性で残りを過ごしそうです。
    自分のSEASON2も真剣に考えないと!

  2. たろさん

    ありがとうございます!
    残りの人生、動けるうちは
    自分でも楽しみながら何か地域社会の役に立てれば
    良いなぁと思っています☺️。

  3. >児童が自ら描き上げたポスター121点の全てが
    これって 素晴らしいアイディアですね。過去、近傍の小学校中学校から選ばれた筆字やデザインを実体化したことがありますが、全部採用ってのは いいねぇ!
    で、SEASON2開始 おめでとうございます!
    バリバリご自分を楽しんで社会貢献ヤラカシテください!!

    ワタシ? (⌒・⌒)ゞ
    まだまだ 現役続行です 多分?
    零細企業の強み ルールもモラルもなし
    社長と
    いつまでやる?もう少しやるかぁ・・・と
    いい加減に やってまーす

    • 高忠さん

      ありがとうございます!
      今後ワタシがどのくらい貢献できるのか
      全くわかりませんが
      肩の力を抜きながら頑張りま〜す。

      ポスターのアイデアについては
      本当に素晴らしいと思いました。
      山本悠さんのコラム記事に
      全国各地に貼られた
      ポスターの一部が紹介されています。

      https://www.ameet.jp/column/4902/

      素晴らしい!!

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